GTFS のライセンスとカバレッジ(日本)
日本の GTFS は CC0 / CC BY 4.0 / ODPT 基本ライセンス / チャレンジ限定の 4 系統。バスは 380 以上の事業者が CC BY 4.0 中心で公開、鉄道は首都圏に偏る。時刻表は事実データでも、API 登録で契約上の拘束が生じる。
調査時点: 2026-06。公開事業者とライセンスの配分はその時点のもの。
GTFS とは
General Transit Feed Specification。公共交通の時刻表を機械可読にするための共通フォーマットで、2005 年に Google とポートランドの交通局 TriMet が Google マップの乗換案内のために作った。現在は非営利団体 MobilityData が仕様を管理し、事実上の世界標準になっている。
実体は CSV を zip にまとめたもの。中核は 5 ファイル。
| ファイル | 中身 |
|---|---|
stops.txt | 停留所・駅の名前と緯度経度 |
routes.txt | 路線 |
trips.txt | 便(路線のある日のある 1 本) |
stop_times.txt | 各便が各停留所に着く・出る時刻 |
calendar.txt | 運行日のパターン(平日・土休日など) |
遅延や車両位置のリアルタイム配信は GTFS Realtime という別仕様。日本では国土交通省が 2017 年に GTFS を基にした「標準的なバス情報フォーマット(GTFS-JP)」を定め、公開すれば Google マップなどに乗換案内が載るため、地方のバス事業者を中心に公開が進んだ。時刻表は事実データで著作権は弱いが、配布元ごとの利用条件が異なるため、集約・加工して公開する際はライセンスの確認が要る。以下はその整理。
ライセンス 4 系統
| ライセンス | 商用 | 再配布 | 加工物の Web 公開 | 主な制約 |
|---|---|---|---|---|
| CC0 | 可 | 可 | 可 | なし(クレジット不要) |
| CC BY 4.0 | 可 | 可 | 可 | クレジット表示のみ。gtfs.jp の推奨ライセンス |
| ODPT 基本ライセンス | 可 | 多段再配布(転々流通)を制限 | 可(実務解釈) | クレジット表示、更新通知後 1 週間以内の反映、ロゴ・路線色の無変更、API 登録必須 |
| チャレンジ限定ライセンス | 要事前登録 | チャレンジ期間中のみ無償公開が条件 | 期間限定 | 終了後の継続利用は要問い合わせ |
gtfs.jp の配布ガイドラインは CC0 / CC BY 4.0 を推奨し、NC(非商用)・ND(改変禁止)は不適切と明記している。
ODPT「多段再配布」の読み方
「加工データを第三者がさらに API / ダウンロードで自由に再配布できる形で出すこと」を禁じるもの、というのが業界の一般解釈。アプリや Web サービスとしてエンドユーザーに処理結果(到達圏ポリゴン、ランキングなど)を表示する行為は「アプリケーションの提供」であって再配布に当たらない、という実務解釈が通用している。ただし原文は開発者登録(無料)後でないと参照できず、公開情報だけでは一次確認が取れない。
事実データとライセンス
時刻表の「事実」(発着時刻・駅名)は創作性を欠き著作物性がないと解されるのが通説。一方、GTFS として編成された「データベース」は著作権法 12 条の 2 のデータベース著作物として保護されうる。さらに ODPT(公共交通オープンデータ協議会) のような配布元は契約による利用条件の拘束を含むため、「事実だからライセンスを無視できる」は成立しない。API 登録の時点で契約関係が生じると考える。
カバレッジ(2026-06)
- バス: gtfs-data.jp に 380 以上の事業者・市町村が登録、CC BY 4.0 が多数。全国約 2,000 社に対して地方に空白がある。大手の一部(国際興業・関東バスなど)はチャレンジ限定。
- 鉄道(公開済み): 東京メトロ(ODPT 基本)、都営交通(CC BY 4.0)、横浜市営地下鉄・つくばエクスプレス・多摩モノレール・函館市電(ODPT 基本)、東京臨海高速鉄道(CC BY 4.0)、富山地鉄・熊本電鉄系(CC BY 系)、JR 東日本 関東在来線(チャレンジ限定、新幹線除外)。
- 鉄道(未公開): JR 西日本・東海・九州・北海道・四国、近鉄・阪急・阪神・名鉄・西鉄・南海・京阪、大阪メトロ・東急。
- 研究者作成の非公式 GTFS(gtfs-gis.jp)に JR 西岡山・JR 九州熊本などが断片的にあるが、研究目的限定。
GTFS で全国を覆える割合は約 2 割。鉄道の大手私鉄・JR 幹線は手作業集計に頼っているのが実態。
欠損地域の扱い
GTFS がない地域をスコアに含めると偽陽性・偽陰性が出る。先行研究・先行サービスの標準作法:
- GTFS 未公開は農村に集中するので、欠損を除外すると残るスコア一覧が都市に偏る。この偏りを前提に設計する。
- 欠損地域は「低スコア」ではなく「未計測(グレーアウト)」として表示する。Walk Score が日本で Transit Score を出さないのも、この欠損処理の結果。
- 「バス停半径 N m 圏」型の指標は農村でアクセシビリティを過大評価する。便数を使う指標はこのリスクが低い。
- 集計日・対象事業者数・未収録自治体を全ページに表記する。
関連
更新履歴
- 2026-06-09: 初版(ローカル調査ノート)
- 2026-10-17: Wiki へ移植、概念ページとして再構成。「GTFS とは」の節を追加
出典
- https://www.gtfs.jp/developpers-guide/distribution_guidelines.html
- https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/sosei_transport_tk_000067.html
- https://ckan.odpt.org/dataset
- https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja
- https://gtfs-jp.org/cc-risk.pdf
- https://developer.odpt.org/
- https://developer.odpt.org/terms/data_basic_use_guideline.html
- https://www.odpt.org/overview/
- https://challenge2025.odpt.org/ja/entry.html
- https://gtfs-gis.jp/gtfs4research/
- https://gtfs-gis.jp/railway_honsu/