個人開発の収益化チェックリスト(税務・法務・決済・セキュリティ)

一言まとめ

個人開発で少額でも売上を立てるときに踏みやすい地雷を「踏むと痛い順」に並べたもの。開業届・特商法表記・商標調査・クラウド請求のハードキャップ・2FA・撤退基準を「最初の 1 円」の前に揃える。

作成 · 更新 · #indie-dev#tax#legal#checklist
目次 13 sections
  1. 01 1. 税務・会計(最初に整える)
  2. 02 2. 法務・規約(公開前に整える)
  3. 03 3. 決済・銀行
  4. 04 4. データ・セキュリティ
  5. 05 5. リスク・保険
  6. 06 6. インフラ・コスト管理
  7. 07 7. 知財・広告
  8. 08 8. 会社員副業の追加論点
  9. 09 9. 撤退基準
  10. 10 10. 専門家相談の目安
  11. 11 「最初の 1 円」の前に揃える最小セット
  12. 12 関連
  13. 13 更新履歴

調査時点: 2026-04。金額・制度はその時点のもので、法的・税務的助言ではない。

1. 税務・会計(最初に整える)#

  • 開業届: 売上が出始めたら税務署に提出(無料)。出さないと青色申告の 65 万円控除が使えない。建前は売上発生後 1 か月以内。青色申告承認申請書を同時に出す。
  • 会社員の副業: 副業所得 20 万円超で確定申告が必須。住民税の申告は 1 円から必要。住民税は「普通徴収(自分で納付)」を選ぶと給与と合算されない。
  • インボイス制度: 売上 1,000 万円以下でも B2B 顧客がいると適格請求書発行事業者の登録を迫られる。登録すると課税事業者になり消費税の納付義務が生じる。B2B 向けなら最初から計算に入れる。
  • 海外売上: 円転時の為替差益が雑所得。海外法人向けは消費税の輸出免税(書類保管要件あり)。米国顧客から W-8BEN を求められることがある。
  • 経費の家事按分: 自宅作業の家賃・光熱費・通信費は事業使用率で按分できる。根拠資料(時間記録など)を残す。
  • 減価償却: 10 万円以上の PC・モニタは資産計上。30 万円未満は青色申告の少額減価償却資産特例で一括償却できる。
  • クラウド会計: freee / マネーフォワード(月 ¥1,000〜)。Stripe・銀行口座連携で大半が自動化できる。
  • 税理士相談: 売上 500 万円超か法人化の検討時。確定申告スポットで 5〜10 万円、顧問で月 1〜3 万円が目安。

2. 法務・規約(公開前に整える)#

  • 特商法表記: サブスク・継続課金なら必須。事業者名・住所・連絡先メール・代表者名・返金規定・解約方法。自宅住所を出したくなければバーチャルオフィス(月 ¥1,000〜¥5,000)。
  • 利用規約・プライバシーポリシー: テンプレ生成サービス(月数千円〜)か、弁護士レビュー(5〜10 万円)。
  • 業種別規制: 金融系は資金決済法・金商法、医療系は薬機法・医療広告ガイドライン、求人系は職業安定法、マッチング系は出会い系規制法、SaaS 全般は個人情報保護法。
  • 商標調査: J-PlatPat(無料)でサービス名・屋号を検索する。既存商標と類似だと差止請求と損害賠償、改名コストは 100 万円を超えうる。登録は 1 区分 3.4 万円(出願 1.2 万 + 登録 2.2 万、10 年)。
  • 著作権・OSS ライセンス: GPL 系をプロプライエタリに混ぜると感染、AGPL は SaaS 経由でも公開義務。画像・フォントは商用可否、LLM 生成物は各社の利用規約を確認する。
  • 景品表示法・ステマ規制(2023-10〜): アフィリエイトは「広告」表記が必須。「No.1」「満足度 95%」は第三者調査の根拠がないと措置命令のリスク。
  • Cookie 同意: EU 顧客がいれば GDPR でバナーが必要。

3. 決済・銀行#

  • 事業用口座を分ける。屋号付き口座は GMO あおぞらネット銀行が個人事業主向けに開設しやすい。
  • Stripe の本人確認は本番前に通す。審査に落ちたら Square / PayPay などへの切替が要るので、ローンチ前に済ませる。
  • 入金サイクルは Stripe 標準で週次。日次にすると振込手数料がかかる。
  • チャージバック率 1% 超で Stripe の Excessive Disputes Program に入り、アカウント凍結のリスク。カード会社経由なので Customer Portal では止められず、メール窓口が要る。
  • 海外送金は Wise / Revolut Business で日本円受取にすると安い。PayPal は凍結時の資金拘束(180 日)リスクが高い。

4. データ・セキュリティ#

  • 個人情報保護法: 取扱件数の閾値は撤廃済み(2022 年改正)。1 件でも対象。漏洩時は本人通知と個人情報保護委員会への報告義務(重大事案は 30 日以内)。誰が誰に何を通知するかの手順を先に書いておく。
  • 2 要素認証: GitHub・Stripe・Cloudflare・AWS・ドメインレジストラの全アカウントに TOTP / Passkey。
  • バックアップ: DB の定期スナップショットとオフサイト保管(別リージョンか S3 Glacier)。復元手順を年 1 回テストする。
  • シークレット管理: git に push しない。git-secrets / TruffleHog で事前検出。環境変数は Cloudflare / Vercel か Doppler / Infisical。
  • ログの保存期間: 個人情報を含むログは保存期間を明記(90 日が無難)。長期保管は匿名化。
  • B2B 大手は SOC 2 Type II(300〜500 万円)や ISO 27001 を要求する。個人では事実上不可能なので、価格と契約条項で大手を弾く設計にする。

5. リスク・保険#

  • Tech E&O(IT 業務賠償責任保険): 年 5〜30 万円。バグ・データ漏洩・サービス停止時の賠償をカバー。
  • 専業なら国民健康保険(任意継続は最大 2 年)、所得補償保険、小規模企業共済(掛金全額所得控除)、iDeCo。

6. インフラ・コスト管理#

  • クラウド請求の暴走対策: AWS / GCP / Cloudflare で予算アラートとハードキャップを設定する。DDoS・クリプトマイナー・無限ループで月数百万円の請求が来た事例は多い。個人カードの利用上限を低めにして物理的なキャップにする。
  • Cloudflare の利用規約: 動画配信や大量転送はプランによって禁止される場合がある。規約違反で停止されると数時間で全サービスが落ちる。
  • ドメイン・SSL の自動更新: 失効で SaaS 全停止、全顧客解約がテンプレ事故。カード期限切れ通知を Slack に流す。

7. 知財・広告#

  • 商標登録は早めに。特許は個人開発では費用対効果が薄く、防衛目的ならブログで公知化して他社の特許化を妨げる手がある。
  • アフィリエイトは ASP 規約違反で報酬没収とアカウント停止。自己アフィリエイト・家族アフィリエイトは禁止が一般的。

8. 会社員副業の追加論点#

  • 就業規則の副業条項(許可制・届出制・全面禁止)を確認する。
  • 競業避止義務: 本業と類似分野は懲戒理由になる。
  • 健康保険組合によっては副業所得の申告義務がある。
  • 会社に知られる典型は住民税の徴収方法のミス。

9. 撤退基準#

  • ローンチ前に書く。「12 か月後に MRR が X 円未満なら畳む」「MoM 成長率 0% が 3 か月続いたら撤退」のような形。書かないと無限に延命する。
  • サービス終了時の義務: データ返還・エクスポート機能の提供、課金停止と日割り返金、30〜90 日前の告知、ドメインは売らず保有し続ける(フィッシングへの転用防止)。

10. 専門家相談の目安#

トリガー相談先費用感
開業税務署(無料)0 円
売上 100 万円超クラウド会計 + 自力確定申告月 ¥1,000
インボイス・海外売上税理士スポット5〜10 万円
利用規約・プライバシーポリシー弁護士5〜30 万円
商標登録弁理士 / オンライン出願サービス3〜10 万円
売上 500 万円超顧問税理士月 1〜3 万円
売上 1,000 万円超法人化の検討(司法書士 + 税理士)設立 10〜25 万円
重大インシデント弁護士・PR・個人情報保護委員会への報告都度

「最初の 1 円」の前に揃える最小セット#

  1. 開業届を提出
  2. 事業用銀行口座
  3. Stripe の本人確認
  4. 特商法表記・利用規約・プライバシーポリシーの公開
  5. 住所の扱い(自宅を出すか、バーチャルオフィス)
  6. サービス名・屋号の商標調査(J-PlatPat)
  7. クラウド請求の予算アラートと上限
  8. 主要アカウント(GitHub / Stripe / ドメイン)の 2FA
  9. DB バックアップの自動化
  10. 撤退基準を書いた 1 行

関連#

更新履歴#

  • 2026-04-18: 初版(ローカル調査ノート)
  • 2026-10-17: Wiki へ移植、概念ページとして再構成

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