スクレイピングの法的位置づけ(日本・米国)
一言まとめ
日本に Web スクレイピングを直接禁止する法律はないが、不正アクセス禁止法・業務妨害罪・利用規約違反・著作権法 30 条の 4 の但し書きが効く。米国 hiQ v. LinkedIn は「CFAA 上は適法でも契約違反は別」で終わった。
目次 5 sections
調査時点: 2026-04。法的助言ではない。
Web スクレイピングは、プログラムで Web ページを取得し、必要な情報を抽出する処理。ここではその取得・抽出に関わる法律と契約上の論点を扱う。
日本
直接禁止する法律はない。リスクになる法令は 4 つ。
| 法令・論点 | 効く場面 |
|---|---|
| 不正アクセス禁止法 | 認証を回避してアクセスしたとき。公開タイムラインへの機械アクセスには直接適用しにくい |
| 業務妨害罪(偽計) | 過度な頻度でサーバーに負荷をかけたとき。岡崎市立図書館事件(2010)が参照例 |
| 利用規約違反 | ToS がスクレイピングを禁止している場合、債務不履行・不法行為になりうる |
| 著作権法 30 条の 4 | 情報解析目的(享受目的でない)の利用は許容されうるが、「著作権者の利益を不当に害する」場合は但し書きで適用除外 |
米国 hiQ Labs v. LinkedIn
- 第 9 巡回区(2022-04-18): 公開データのスクレイピングは CFAA(コンピュータ詐欺・濫用防止法)違反を構成しないと判示。
- 最終決着(2022-12 合意): hiQ は LinkedIn のユーザー規約違反に基づき $500,000 を支払って終結。
- 構造: 「CFAA 上は適法」と「契約違反」は別問題。公開データでも、アカウントを作って規約に同意した上でのスクレイピングは契約で縛られる。
設計上の含意
- ログインが要るページは触らない(不正アクセス・契約違反の両方に当たりやすい)。
- 頻度を抑え、robots.txt とレート制限に従う(業務妨害の回避)。
- 取得したデータを「享受目的」で再配布しない。解析して集計値を出すのと、本文を転載するのは扱いが違う。
- API がある場合は API 規約が優先する。API 規約の方が厳しいことも多い(X の再配布制限など)。
関連
更新履歴
- 2026-04-16: 初版(ローカル調査ノート)
- 2026-10-17: Wiki へ移植、概念ページとして再構成。冒頭に定義を追加